材料

【レアメタルとは】わかりやすく解説【産地、種類、使い道】

レアメタル、レアアース、都市鉱山。
ニュースでも取り上げられるキーワードです。

レアメタルは私達の生活に欠かせない重要な素材です。
パソコン、スマホ、自動車などに使われています。
しかし、産地や生産国が限られているので、
政治問題などで輸入できなくなると、産業にダメージです。

レアメタル(希少金属)とはどのような素材なのでしょうか。
今回は『産地』『分類』『用途』について、
材料科学13年の専門家が解説
します。
それでは、よろしくお願いします。

けけ博士
けけ博士
東大の授業で習った内容を、小中学生にもわかるように説明する試みです

金属の種類

金属は『貴金属』『ベースメタル』『レアメタル』に分けられます。
順番に説明します。

貴金属

金・銀・白金(プラチナ)・パラジウムなど、錆びにくい金属。
劣化しにくくずっとキレイなので、ジュエリーなど宝飾品に使われます。
とても安定な金属で、自然界で金属として存在します。
これは珍しいことです。

ベースメタル

“普通の金属”を『ベースメタル』といいます。
鉄、アルミ、銅、亜鉛のように豊富に存在して、
たくさん使われている金属です。

貴金属と違って、あまり安定じゃないので、
自然界では酸素などとくっついて『鉱石』として存在しています。
鉱石を溶かしたり、電気で分解して、金属として取り出すのは
けっこう大変でお金がかかります。

けけ博士
けけ博士
例えば鉱石から『アルミ』を作るのにはかなり電気を使います。なので、アルミの生産国は中国・ロシア・カナダなど電気代が安い国が多いです。

レアメタル

レアメタルはベースメタル・貴金属以外の金属です。
ただ、金・銀以外の貴金属(白金やパラジウム)は、
レアメタルとして扱われることが多いです。

厳密な定義はありませんが、経済産業省は
「地球上の存在量が稀であるか、
技術的・経済的な理由で抽出困難な金属のうち、
安定供給の確保が政策的に重要」なものとしています。

レアメタルの需要(社会で使われる量)はベースメタルより小さいです。
アルミや鉄はそれ自体として使われることがありますが、
レアメタルはそれ自体として使われることは稀です。

ただ、鉄やアルミにレアメタルを少量混ぜると、
性能が劇的に向上することがあります。

けけ博士
けけ博士
このことからレアメタルは”産業のビタミン”などと呼ばれます。例えば、鉄にネオウムを少量混ぜると強力な磁石を作れます(ネオジム磁石)。

さて、レアメタルは3つに分類できます。

レアメタルの分類
  1. 地球に存在する量が少ない
  2. 存在する場所が少ない
  3. 広く薄く散らばっていて、かたまりとして取り出すのが難しい
  4. まとまっているが、鉱石から金属を取り出すのが難しい
  5. 生産している国が少ない

以下、順番に解説します。
(レアアースの説明は⑤にあります)

レアメタルの種類・用途

1. 存在量が少ない

存在量が少ないのは一番わかりやすいタイプです。
例えば、『白金』や『パラジウム』
そもそも地球にあまり無いのでレアです。

これらは『走るレアメタル』などと呼ばれることがあります。
というのは排気ガスをキレイにするための触媒として、
自動車に使われることの多い金属です。
私達の空気をキレイにしてくれる金属です。

キレイですし、錆びないので、宝飾品としても使われます。

2. 存在する場所が少ない

量としては多く存在しているけど、
決まった国でしか取れないということです。

例えば『ニオブ』は埋蔵量の95%以上がブラジルにあります。
コンデンサという電子部品や、自動車用の鉄に使われます。
ニオブをちょっと混ぜることで鉄を加工しやすくなり、
狙ったカタチの鉄を作ることができます。

しかし、ブラジル以外に大量にニオブを作れる国はありません。
ブラジルがもし輸出しませんと言ったら、
自動車産業は世界的パニックになってしまいます。

3. 広く薄く散らばっている

量としては地球に多く存在しているけど、
濃度が薄くて、集めるのが難しいタイプです。
『リチウム』『バナジウム』『スカンジナビウム』などがこれです。

リチウムはスマホ・パソコン・自動車用のバッテリーに使われます。
小型・軽量なため、持ち運びに便利で、私達の生活の質を向上させてくれます。
現代の『持ち運びたいレアメタル』ランキングNo. 1です。
2019年には吉野彰・博士がノーベル化学賞を受賞したのは、
『リチウムイオン二次電池の開発』が理由です。

『バナジウム天然水』のバナジウムもこの仲間です。
バナジウムはどこにでもあるので、
どこの天然水もバナジウム天然水なんですが、
ミネラルウォーターのマーケティングに使われています。

4. 鉱石から金属を作るのがむずかしい

量として地球に多く存在していて、まとまった鉱山もあるけど、
その石から属だけを取り出すのが技術的に難しいタイプです。
『チタン』や『タングステン』がその例です。

前の章で『アルミを作るのにはかなり電気を使うので、
生産国は中国・ロシア・カナダなど電気代が安い国』と言いました。
チタンを作るのもかなり電気を使いますが、
技術力が無い国ではチタンは作れません。
日本は電気代がとても高い国ですが、技術があるので、
チタンの生産能力では上位に入っています。

チタンは『空飛ぶレアメタル』とも言われます。
軽いのに強度がバツグンに良いので、飛行機に使われます。
表面に膜を作って安定化する金属でもあるので、
骨折を治療するときの、人工骨や人工関節として使われることがあります。

5. 生産している国が少ない

地球に広く存在していて、量もあって作るのも難しくないけど、
あまり生産している国が少ないのでレアになっているタイプもあります。
中国で有名な『レアアース』がこれです。

レアアースには17コの金属からなるグループです。
だいたい同じところから仲間で出てきます。
全部レアメタルです。

他の場所でも採れるのに、どうして中国ばかりが作るのでしょう。
それは、作るときに環境負荷が大きいからです。
環境を汚してしまうという意味です。

まず、地球に穴を開けて、大量の石をとります。
その石を酸で溶かしたり、大量の水で洗います。
洗った水は汚染されることになります。

環境規制の厳しい先進諸国では作ることが難しいです。
“規制の緩い”中国の生産量が多くなっています。

レアアースに含まれる17コの金属の例と用途としては、
『ネオジム』『ジスプロシウム』
電気自動車(EV)風力発電のためのモーター用に、
強力な磁石を作るのに使います。
『セリウム』
自動車の排気ガスを浄化するための触媒に使います。
などがあります。

けけ博士
けけ博士
エコなんだか、環境破壊しているんだか、非常に難しい問題です。みなさんはどう思いますか。

まとめ

金属の中でのレアメタルの立ち位置 (金属 = ベースメタル + 貴金属 + レアメタル)
レアメタルの分類 (①量が少ないタイプ、②特定の国にだけあるタイプ、③散らばっているタイプ、④石から金属を作るのが難しいタイプ、⑤特定の国しか作っていないタイプ)
レアメタルの用途 (走る、飛ぶ、持ち運ぶ、浄化 etc.)

を説明しました。私達の生活に欠かせないレアメタル、
環境問題や政治問題とも大きく関わっていることがわかりました。

こうなると日本国内でのリサイクルの重要性が増してきます。
また、なるべくレアメタルを使わなくても
高品質の製品を作れるような戦略
も必要になってきます。
『リサイクル』や『都市鉱山』については別記事で解説する予定です。
よろしくお願いします。

最後までご覧いただき、
ありがとうございました。

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