鉱物

【自由研究】割っても砕いても,また同じカタチ【カルサイト(方解石)の劈開】part 1

カルサイト』という鉱物があります。
この透明な結晶は何回割っても同じカタチに割れます。
このことから日本語では『方解石』と呼ばれます。

すぐに買えるこの鉱物を、トンカチで叩くだけで、
『原子の世界』を感じられるオモシロ実験ができます。

家でできる簡単な自由研究として、『劈開(へきかい)』という現象を紹介します。
おもしろいので、写真だけでも見ていってください。

けけ博士
けけ博士
研究歴13年、材料科学の専門家として、
わかりやすく解説します。
それでは、よろしくお願いします。

カルサイト(方解石)とは

『カルサイト』は炭酸カルシウム(CaCO3)の透明結晶です。
結晶というのはカルシウムと炭酸が交互にキレイに並んでいる、ということです。
日本語では方解石と呼ばれています。
石灰・チョーク・卵の殻と同じ成分なので、白のイメージがありますが、
下の図のように規則正しく、原子が順番に並ぶと透明結晶になります。

–脱線—-
『パワーストーン』などとも呼ばれます。
安くてキレイなので、良いのだと思います。
『過去・現在・未来を表す』などとの売り文句も聞きます。
(新古今和歌集ばりの「どれかひとつに決めて」案件)
複屈折(光が分かれて見える現象)を示す物質なので、
そう言いたい気持ちはわかりますが、科学的効果はありません。
(自分はほぼ毎日触っていますが、普通です)
–閑話休題—-

見た目はキレイですが、たくさん産出するので価値は高くないです。
また、軟らかくてキズが付きやすいので、宝石として使われることは少ないです。
完全な”劈開(へきかい)”を示す物質として有名です。

劈開(へきかい)性の実験

カルサイトはへき開性を示す、もっとも有名な鉱物です。
『へき開』というのは、特定の方向に割れる性質です。
さっそくですが、カルサイトの透明結晶を叩き割ってみましょう

叩いて割る実験

何度も叩いて、結晶を割ってみました。
そのときの動画がコチラ

ナイフなどを立てて、それを叩くともっとキレイに割れますが、
今回はわかりやすさのために平面で叩きました。

さらに細かく砕く動画はこちら

っても割っても菱形に割れることがわかりました。
どんなカタチか、詳しく見てみましょう。

割れた結晶を観察

大きい結晶を見てみましょう。いずれも菱形です。
右下に比較のためのサイズを描いています(スケールバー)。
2 cmくらいと6 cmくらいです。

中くらいの結晶を見てみましょう。
2ミリ、3ミリくらいの大きさ。
これも同じカタチ、菱形。
平行にスパッと割れています。

さらに小さい粒子を見てみましょう。
1ミリよりさらに小さく、
数100ミクロンの大きさになっても菱形です。
(髪の毛の太さが100ミクロンくらい)

もっと小さい結晶では、どのくらい小さい菱形があるのでしょうか。
なんと100ナノメートル以下の粒子も菱形です。
今回の実験ではありませんが、下に写真を貼ります。
これは髪の毛の太さの1000分の1くらいの大きさで、
ウイルスよりも小さいです。

なぜ特定の方向に割れる?

結晶は原子が規則ただしく並んでできています。
この原子の配列によって、割れやすい面、
つまり割れやすい方向があります。

記事が少し長くなってしまったので、
詳しい理由は明日の記事で解説します。
図を使ってわかりやすく、『原子の世界』を紹介しますので、
ぜひあわせてご覧ください。

まとめ

カルサイト(方解石)の結晶を叩き割る実験をやってみました。
砕いても砕いても同じカタチに割れて、おもしろいですよね。

今日は実験結果の報告をしましたが、
明日の記事では、『へき開』について、
・なんで起きるか: 原子スケールの解説
・なにに使うか: 世界一硬いダイヤモンドを割る方法
を解説します。

ダイヤモンドを叩き割るのはハードルが高いですが、
カルサイトはネット通販で数千円から買えます。
(それか、コメントで言ってもらえたら、
5cmくらいのを送料込み1こ1000円とかで送ります)

自分で叩き割ってみたり、ハンマーがなければ
高いところから落としたりしてみると、
新しい発見があるかも知れません。
割った断面の幾何学的な模様を眺めてみると、
石ができるのにかかった何万年もの時間や、
原子の並びに想いをはせることができると思います。


最後までご覧いただき、
ありがとうございました。

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