鉱物

【自由研究】劈かい性を示す理由【カルサイト(方解石)を叩き割る】part 2

昨日の記事で『カルサイト』透明結晶を叩き割る実験をしました。
何回割っても同じカタチに割れることがわかりました。
このような現象を 『劈開(へきかい)』ということを紹介しました。

今回の記事では、この実験からなにがわかったか。
『へき開』について、
・なんで起きるか?: 原子スケールでの解説
・なにに使うか?: 世界一硬い「ダイヤモンドを割る方法」など、実社会での応用
について解説します。

けけ博士
けけ博士
研究歴13年、材料科学の専門家として、
なるべく図を多く使ってわかりやすく説明します。
それでは、よろしくお願いします。

実験の復習

カルサイト(方解石)の透明結晶をハンマーで叩きわりました。
何度も割って、小さくしていっても、
どの結晶も”元の結晶”と同じ、菱形に割れました。

メカニズム: なぜ特定の方向に割れる?

結晶は原子が規則ただしく並んでできています
この原子の配列によって、割れやすい面、
つまり割れやすい方向があります
この割れやすい面を『劈かい面』といいます。

カルサイトの原子の並び方を見てみましょう。
劈かい面では陽イオン(Ca2+)と陰イオン(CO32-)が
交互
に並んでいて、同じ数あります(図の青いライン)。

このような面は電気的に中性で、
剥がれやすく
なっています。
この特定の面で原子が剥がれちゃう現象が
『劈かい』の正体です。

カルサイトにはこのような劈かい面が3種類あります。
この3種類の面で平行に割れるので、
平行六面体(=菱形)の結晶がカタチ作られます。

[ちょっと詳しい説明]
中性面がすべてへき開面であるわけではありませんが、
このように特にエネルギーの低い”安定面”はへき開面になりやすいです。
反対に陽イオンだけor陰イオンだけというような、
電気的に極性がある面はエネルギーが高くなります(図の赤いライン)。
不安定面なので、表面に出てくることはありません。

用途: どんなことに利用されてる?

ダイヤモンドの加工

『世界一硬い鉱物』として知られるダイヤモンド。
ブリリアントカットと呼ばれる特殊な加工を
施すことで、特別な輝きを放ちます。

もちろん天然にこのカタチで産出するわけではありません。
原石はもっといびつなカタチをしています。

では、世界一硬いのにどうやってカットするのか?
どうやってカタチを作るのか?気になりますよね。

正解は原石にナイフを立てて、トンカチで叩いて、
へき開でスパッと割ります
ダイヤはキズの付きにくさは世界イチですが、
割れにくさで言うとルビーやサファイアよりも弱いです。
おもしろいので、詳細は別記事で、改めて紹介します。

(左画像引用元: nationaljeweler.com)

けけ博士
けけ博士
昔『トリビアの泉』という番組がありました(2002-2006年、フジテレビ系列)。
『ダイヤはトンカチで叩くと割れる』というテーマで、
3カラットのダイヤモンド(200万円)を叩き割っていました。
..75へぇでした。

雲母のキラキラ

雲母(うんも、マイカ)という鉱物は1方向にだけ、劈かい性を示します。
へき開させることで、シート状の粒子を取り出すことができます。
天然の鉱物は『下敷きをたくさん重ねたような構造』になっていて、
どこからでも、どの厚さでも剥がすことができます。

これをペリペリと剥がして、適当な大きさに砕いて使います。
剥がれた面が、光を反射してキラキラと輝くので
『キラ』とも呼ばれます。

そうです、キラカードのキラはこのマイカです。
浮世絵にもキラを使っていたみたいです。
江戸時代の人が喜んでいたの、想像できますよね。
キラキラをキレイと思う気持ちは、今も昔も変わらないようです。

自動車のボディカラーでブラックマイカ・ブルーマイカといった
コーティング塗料のキラキラもこのマイカです。

あとは、マスカラ・ファンデーション・マニキュアなど
化粧品のキラキラもマイカです。

まとめ

『カルサイト(方解石)の結晶を叩き割る実験』、
砕いても砕いても同じカタチに割れる『劈かい』という現象が
なぜ起こるか、簡単ながら原子スケールの解説をしました。

また、『劈かい』が産業的に実際に使われている例として、
「ダイヤモンドのカット」「雲母のキラキラ」を紹介しました。

普段あまり意識することのない現象ですが、
実は生活のいたるところで役に立っています。

けけ博士
けけ博士
最近では「詰め込み教育はダメ!」
などと言われることもありますが、
知っているからこそ考えられると言いますか、
考えるときの材料は知っていること(=知識)だけ
だと思っています。
なので、自分は新しいことを知るのは好きです。
特に自然が好きです。

鉱物』『材料』は自分の専門です。
良ければ他の記事も覗いてみてください。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

Twitter(@kekehakase)をやっています。
今後も有益な情報を発信していきますので、
フォローしていただけたら嬉しいです。

関連記事